サンタの影に潜むAmazon
「サンタさんの真実を知ってもさあ、やっぱ朝起きて枕元にプレゼントが置いてあるってシチュエーションって、嬉しいんだよね〜」
中1になった今なおそんな風に目をキラキラさせながら語っていた息子のもとにイブ前日、父親からLINE経由で届いたメッセージがこれである。
「クリスマスのプレゼント、今日Amazonで頼んだから明日届く」
「…分かってる、分かってはいるけどさあ!!」とトホホ顏の息子。
思えば、クリスマスの朝、枕元に置いてあったプレゼントを不思議そうに眺めながら「アマゾンって書いてある…」と息子が呟いたのは早いもので7年前のことであった。当時から我が家には毎日のようにAmazonと印字された段ボールが届いていたので、プレゼントに添えられたサンタさんからのメッセージカードの裏にご丁寧に印刷されていた文字にも、幼稚園児ですら馴染みがあり過ぎた。
サンタさんという存在と、その未知なるパワーを信じていた息子の夢を壊さぬよう「このご時世だし、サンタさんもAmazonを使うんだね」とめちゃくちゃなことを言って誤魔化したけれど、それがいまや親の方からこうも開けっぴろげ。時が経ったのだなぁと思う。
しかし私と息子のこのあたりのやり取りを聞いて身を乗り出してきたのが娘であった。
「え、なに?Amazon?どういうこと?」
薄々真実に到達しかけてはいるものの、もうすこし夢を見ていたい娘に、息子はわざとらしく「いやだからね、サンタさんはパ…」とか言いかけてニヤニヤしている。
私はというと、正直もうこの際成り行きで、娘がサンタプロジェクトの真実にたどり着くのも悪くないかなと思い、だんまりを決め込むことにした。
というのも、サンタプロジェクトというのはただでさえ慌ただしい年末に、顧客からオーダーとって期日までに発注して、しかるべき時まで秘密裏に保管して夜更かしして設置と、とにかく段取りが非常に大変なのである。盆と正月は一緒にやって来ないがクリスマスと正月は一緒にやってくる。正確に言うと、インフルエンザとノロウィルスと気管支炎が蔓延して子供が学校を休みがちな時期と忘年会シーズンと年末進行と天皇誕生日の祝日とクリスマスと正月とそれに伴う帰省はいっぺんにやってくるのである。
ここで図らずも娘が真実にたどり着いてくれたとしたら、来年からうちのクリスマスは6月にしよう。
「考えてみなよ。サンタさんがトナカイに乗って、一晩で世界中まわって子供達にプレゼント配ってるとしたら、高速道路走る車より早く移動してるんだよ?皮膚なんか破れてボロボロになって血まみれだよ」
えげつない感じで真実を突き付けようとする息子。
「だけど本には特殊なサンタスーツを着ているから安心と書いてあった!」負けじと応戦する娘。

- 作者: アランスノウ,Alan Snow,三辺律子
- 出版社/メーカー: あすなろ書房
- 発売日: 2005/11
- メディア: 大型本
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本というのはこちらで、サンタは某所に巨大な基地を持っていて、中にはトナカイ飼育舎とか商品テスト部があることなどが紹介されている大変罪つくりな本である。
「それは絵本の話でしょ」と息子は言うが頑なな娘は半泣きになりながら猛反発。
「サンタさんは色々なおもちゃをソリに乗せて飛んでる!子供からの手紙を読んで、その場で注文に応じてプレゼントを配ってる!だから私が今欲しいプレゼント変えても大丈夫」
「ちょ、ちょっと、それじゃサンタさんはトナカイにAmazonの倉庫引かせなきゃいけないじゃん!さすがにもう用意して飛び立ってる思うから今プレゼント変更するのはさすがに無理だよ!」
話が危うい展開を見せ始めたこともあり、やはりまだ早かったなと、息子と私はそっと目配せしてしきり直すことを確認。
「わかった。あなたの言う通りサンタさんはいる。いるよ。」
「…でも肌がボロボロになるんでしょ?!」
「…多分、配送にはドローン使ってるんじゃないかな」
再びヒヤリハットである。娘がスマートニュースやグノシーで時事ニュースの収集に余念がない子供だということをすっかり忘れていた。
そこへ息子が助け舟。
「サンタさんは分子レベルで分解されて未来からきてる」
息子は息子でシュタインズゲートに感化され過ぎである。
「いや、もしかしたらサンタさんは2ちゃんねらーかもしれない。一斉に子供達ににプレゼントを配ろうとネット上で呼びかけて、賛同した親たちがノリノリになってる」
ここまでくるともはや半分正解!
そんなこんなで夢も希望もない議論を経たものの、今年も我が家には無事サンタさんがやってきたのであった。