親が子にあけるという心の穴はハンコ注射説

つい先日、私は都内某所にてビジネスランチに挑んでいた。

偉い人々に囲まれピリリとした緊張が走る中、ここはひとつ持ち前のコミュニケーション力を発揮し和やかな場を演出しなければならない……末端OLたる使命感に駆られ、懸命にビジネストークに挑んでいるそんな最中。私はつい弾みで、接待されるべき側のお一方を「チンピラ」呼ばわりしてしまったのである。ここだけ抽出しても全く意味がわからないと思うがとにかくそんな感じのことを言ってしまったのである。しかしそのチンピラ呼ばわりされた方とは既にFacebookなどで何度も気さくなやり取りをしていたし、このブログも読んでくださっている方なので、冗談として和やかに受け流してくださるだろうという確信があり、有り難いことに実際そうなった。

しかしそこで思いがけないことが起きた。その場にいた別の偉い方が「さすが家入さん!人の心に土足でドカドカ踏み入りますね!」と急に私のことを褒めてくださったのだ。……褒めてくださったのか?疑問も残るが少なくともこれは私の性格を知った上で受容してくださっているということなので大変感動したのと同時に、そんなに何度もお会いしていないこの方がどうしてこんなに的確に私のことをご存知なんだろうと困惑した。するとなんとそのお偉いさんも私のブログを読んでくださっていたことが判明。

赤面しながらしみじみと思った。ブログを書いていてよかったなあ、と。

何しろこんなに話が早いのだ。飲みニュケーションもタバコミュニケーションもすっ飛ばして、人様のフィールドに遠慮なくお邪魔したがりな私の一面が正確に伝えられるツールってブログ以外にちょっと思いつかない。

 

ありがたいことに最近こういうことが結構多い。私が先方のことをよく知る前から私のことを知ってくださっていて、早い段階で距離の近いコミュニケーションに移行させてもらえるようなこと。これまで全然親しく話したことのなかった人から急に連絡がきたと思ったら、聞いてもいないのに夫婦の事情を赤裸々に聞かせていただけるケースなども結構ある。(実名で書いている以上そのつもりですので、読んだらせひ読んだよと教えてください。その方がもっと話しが早いかと思いますので…)

 

常々、そりゃ大人だって色々あるよねって思う。悩みも個性も嗜好も性癖も。

なのに優れた社会人であるために社会に最適化された風を装わなきゃいけなくて、その上では深刻な悩みも特殊な個性もないように見せかけなきゃいけない。社会に最適化されたスマートな者同士のスマートな会話ってアンドロイドとアンドロイドの会話みたいで、人と人とが対峙しているのに一切体温を感じなくて、そういうところに長く身を置いていると私は窒息するかと思うし、スマートに社会に最適化された風を装っている人が実はこんなマニアックな一面を持っていたって知った途端に、その人と私との関係にやっと血が通ったな、酸素が供給され始めたなと嬉しく思う。

恐らくこれまで生きて来た環境にアンドロイド化を断念した、あるいは拒否した血なまぐさいのが多過ぎたのも災いしているんだろうと思う。私だって一時はそういった環境に辟易して、人と人がたとえアンドロイド化しようが一定の距離を保ちながら自立して生活を営む、極めて影の存在感が薄いまばゆい光の国に強い憧れを持っていたけれど、結局蓋をあけてみるとそこに私の居場所はなかったのであった。私なようなものはお呼びでなかった。うん、この話はまた別のときに書こう。

 

*   *  *

 

……ところで今日焼いたパンの紹介をする前に、7月にB&Bでお話させていただいたイベントのレポート、第2回、第3回がアップされました。 


結婚はスタートアップだけど、結婚生活はマネジメント 家入明子×福田フクスケ対談(第1回)|AM「アム」


自分の価値を確認するためのセックスはダサい! 家入明子×福田フクスケ対談(第2回)|AM「アム」


たくさんの糸で“ゆるくつながる”家族を目指そう 家入明子×福田フクスケ対談(最終回)|AM「アム」

 

で、この第3回の、特に以下の内容について少し補足をば。。

家入:たまに夫が家に帰ってくると、子供たちは「ミッキーマウスがやってきた!」みたいなテンションで無邪気に喜ぶんですよね。
日頃いないことに対する恨みを持っていないんです。
そのとき気付いたのは、子供に“心の穴”を空けるのは、“いないお父さん”じゃなくて、“そばにいるお母さん”なんだってこと。

福田:“心の穴”というのは、二村ヒトシさんの言葉で、“親から植え付けられる感情や思考のクセ”のことですね。
女性がだめんずにばかりハマったり、男性がヤリチンになったりするのは、この“心の穴”が原因だと提唱されています。

家入:“お父さんがいないこと”自体が子供に影響を与えるわけじゃないんですよ。
お父さんがいないことで、お母さんが恨んだり傷付いたりしている。
その感情が子供に連鎖して、初めて子供の“心の穴”になるんだなって。

頑張っているお母さんほどこの部分が重荷になってしまうかと思うのでどうしても補足しなければと思う。

そもそも心の穴って、穴っていうから悪しきもののように思ってしまうけれど、実ははんこ注射の跡みたいなもんじゃないかと最近思う。副作用に苛まれる可能性もあれど、うまくいけば予防接種。悪い病気から強力に子供を守ってくれるもの。だからこそ近くにいて日常的に接している大人しか子に与えられないんだろうなと思うのだ。だから自分が子にあけた穴の形が見えたとしても決して罪悪感を感じる必要はなくて、それとどう生きていくのか、どうワクチンとしての効力を発揮させればいいのかっていう方法を示唆してあげられるのでむしろラッキー。うちの場合その方法が記事中にあるようなことだった、という次第です。

 

ひどく負担のかかる環境にいると、ともすれば子供の負担に配慮する余裕がない!なんてときだってままある。でも自分の色々を振り返ってみると、大変な時期こそ、自分が救われることを優先するより、身近な誰かを救うことを優先したほうが、結果的に自分が救われる近道となったことが多かったようにも思う。未熟者の戯言かな。

 

いずれにしても心の穴について書いてある二村ヒトシ先生の以下の本、一見恋愛指南本ですが極めて本質的なことに言及されている、男も女も父親も母親も一度は読むべき名著ですのでぜひ読んでください。

 

そして重ね重ね告知で恐縮ですが、今月配布されているスタジオジブリの小冊子『熱風』に私のコラムを載せていただいてます。ありがとうございます。。

 

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ところで、これは先日焼いたくるみパン。

きび砂糖をつかっているので優しい甘さだが子供たちはくるみが嫌いです。

 

 

今回とても長くなってしまいました。