磯の香りのファンタジー
あおさ海苔クラッカーを作りながら考えた。
全く別の世界を生きてきた人に、私のことを話して聞かせたい。
私の過ごしてきた世界にはこんな決まりがあって、こんな志を持った人たちがいて、こんなことが起こっている。人々はこんなことで疲れて、こんなことで泣いて、こんなことに幸せを見出している。
話して聞かせたい。
私の話に耳を傾けるその人は全く別の世界を生きてきた人。その人の両親も、兄弟も、おじいちゃん、おばあちゃんも、私とは全く別の世界で生きてきた人たちだから、彼らが耳を傾ける私の話は驚きと不思議に満ちている。最初はへえ、へえと面白く聞いているけれど、次第にこの人はちょっとほら吹きなんだろうと思われ始める。だってその世界ではそんなことが起こらないから。鋭く光る疑惑の目。ひるむ私。けれども彼らの心の奥底では、未知の世界へ向けられた好奇心の火が消えることなく燻り続けているのが見える。
ほら吹きだけどどうやら悪人ではないようだと、諦められたのちに受け入れられる。
そういうのも悪くない。
あおさ海苔クラッカー