百人一首が我が家でブーム

 

ちはやふる(1)

 

漫画『ちはやふる』をきっかけに我が家にも空前の百人一首かるたブーム到来。iphone用の無料アプリをいくつもインストールして目下暗記に励んでいる。

ロマンチストの娘は意味と併せて覚えている。

秋風に たなびく雲の たえ間より もれいづる月の 影のさやけさ

これなんかうっとりしながらすぐに覚えたものの

春過ぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山

これについては「詠んだの絶対主婦だね」と断言して割と生活感漂うイメージで見ている。気持ちも分かるが実際は天皇の詠んだ歌だ。


競技としての百人一首かるた、ちょっと興味を持って調べてみるとすごく面白い。ルールはこんな感じ。

競技する2人は、まず百人一首の100枚の札を裏向けにしてよく混ぜます。裏向けにするのは自分の好きな、あるいは得意な札を選んだりしないためです。

互いに25枚ずつ取り、自分の陣地(自陣)に左右87cm以内に3段に分けて並べます。相手の陣地(敵陣)にも同様に並べられた状態となりますが、残りの50枚は箱にしまって競技には使用しません。しかし、読み手は100枚の札を読むので、使わない札は空札(からふだ)となります。

自陣の札を取ったら一枚減り、敵陣の札を取ったら相手に札を一枚送って自陣の札を一枚減らします。 

こうして、自陣の札を早くゼロにした方が勝ちとなります。 

競技かるたをしれば | ちはやふる より引用)

 

試合開始前に15分間暗記の時間が与えられ、選手はその間に自陣、敵陣の計50枚の配列をすべて暗記する。近頃3けたの数字の暗記すらあやしい私にはすでに途方もない話しなのだが、大会では1日に何試合もこなすので、選手たちは試合のたびに配列を覚えて、試合が終わると忘れて、次の試合でまた覚えて、また忘れて、を繰り返すそう。一体この人たちどうなってるんだろうと興味をもって、現在競技かるたで10年連続日本一、クイーンの座を守り続けている楠木早紀さんという方の本を読んでみた。

 

瞬間の記憶力 (PHP新書)

瞬間の記憶力 (PHP新書)

 

 タイトルはずばり『瞬間の記憶力』。

結論から言うとクイーンの瞬間の記憶力は「巨人の星」さながらの血の滲むような努力によって得られていて、明日から使える記憶力を楽に高める裏技なんてないんだということがよく分かった。そういう目的でこの本を読む人はきっとがっかりするけれど、1つの競技で日本一の座を10年守り続ける超人の頭の中がどんな風になってるのか、すごい人を覗きみたい好奇心は十分満たしてくれる本だった。以下本より引用。

 

初心者の頃の私は暗記時間をめいっぱい使って必死で札の位置を覚えていましたが、今では五分もあればすべて覚えられます。単純計算すると一枚につき六秒。(p35)

試合中に札を見渡しているとき、次に詠まれる札が光り輝いて見えることが私にはあります。

たとえば、次に詠まれる歌が「秋の田の」だとすると、その歌が詠まれる前の空白の一秒で、「わかころもては つゆにぬれつつ」と書かれた取り札が、ピカッと輝くのです。

 たぶん、読手が空白の一秒で息を吸い込むときの吸い方で、次の音が直感でわかるのだと思います。(p85-86)

クイーン戦で序歌が詠まれているとき、私は航海をイメージしています。(中略)流れが相手にいって、劣勢に立たされることもあります。

それを航海にあわせてイメージし、自分の心をコントロールしているのです。 

嵐に襲われているさなかは、「耐えろ、耐えろ」と自分に言い聞かせ、嵐がおさまったとき、いつでもスタートを切れる態勢を整えておく。そして、穏やかな海をずっとつかみきれるように、船をコントロールしなければいけない。(p131)

在位期間が長くなればなるほど、クイーンに向けられる視線は、「頑張れ!」という応援から、「いつ負けるのか」という見方に変わってしまいます。そのつらさは、本人と家族にしか分からないーー。(p198)

 

勝負事というのは結局のところ自分との戦いだと楠木クイーン。積み重ねられた努力と実績、それに裏打ちされた揺るぎない自信。誇り高き女王の姿に感服した。

 

 

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ところでこれは先日焼いたフランスパン。自分とぬるく戦っているせいか前回よりもよく焼けた。中途半端に先を尖らせてみたけどこれは別に必要なかったかなという気もしないでもない。