小名浜の『泡』を見てきた。

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先日、震災後の小名浜の風俗店を舞台とした、劇団東京フェスティバル主催の演劇『泡』を、まさに舞台となった小名浜の地で鑑賞してきた。

演劇の中では、とある風俗店に地元の人たちが入れ替わり立ち替わりやってきて、人望の厚い店主と飲み交わしたり、お気に入りの女の子と気さくに世間話したりする。

そもそも風俗店って、なんとなくもっとクローズドで、アンタッチャブルで、そこに用事のある人とない人との間には決してたやすく越えられない深い溝があるものだと私は思っていたので、こんな地域密着型風俗なんてはたして実在するのだろうか?とやや疑問をもっていた。ところが鑑賞後、実際に舞台となった一帯を地元の人に案内していただいて、とてもびっくりした。ごく普通の一軒家が立ち並ぶ住宅街の中に、灯りのともった風俗店の看板が点々と掲げられている。ごく普通の民家のお隣が、あるいはお向かいが、風俗店なのだ。
風俗店の入り口にはそれぞれ客引きのおじさんが立っていた。我々のように男女入り混じった集団が、ぞろぞろと、いかにも冷やかしといった様子で歩けばむっとされるのでは。。とわたしは少々びくびくしていた。ところが実際は、我々を先導してくれた地元の人と、「『泡』を見てきた帰りなんですよ」「ああそう〜」といった様子で非常に気さくに言葉が交わされていた。こんなところがあるのかと衝撃を受けた。

実際『泡』の脚本は、ラジオ番組の構成作家としても活躍されているきたむらけんじさんという方が、かなり入念に現地の取材をして書き上げられたそう。

被災地、と一言で言っても、あらゆる場所には歴史とともに積み上げられてきた様々な独自の風土があって、そこに住む人々もまた、様々な立場から、震災後の現実と対峙しているのだなぁと思った。